静電気は大変特殊な分野です。私自身も大学では電気工学を専攻してきましたが、静電気を学びなおしたのは社会に出て、生産現場で必要を感じてからでした。従って、電気工学科でも電磁気学は教えてくれますが、静電気の挙動としては教えてくれないし、むしろ、電磁気学と応用物理学の狭間にある様な存在となってしまっているのが静電気です。製造現場の皆様に取って必要となる静電気を体系的に、易しく、実験を使って理解して頂きながら、静電気の挙動からその安価な対策方法、イオナイザーや計測機器の使用方法まで皆様の現場にお役に立つ部分(各々の生産現場によって必要な部分は変わると思います)をご説明して行きます。

静電気対策の難しいところは静電気は何処にでも発生しているということです。全ての静電気を除去する事は実施上不可能です。では、効果的な静電気対策はどの工程の何処にすれば良いのでしょうか?この答えも皆様の各々の生産現場によって変わってきてしまいますので、静電気を理解した上で、効果的な対策をパフォーマンス良く行うことが大変重要だと思います。

また、静電気不良の怖さの一つに半導体等の熱溶解があります。静電気を受けた半導体内部が疑似接触をしたまま出荷され、市場に出回ってから故障するという事例が多々見受けられます。このタイプの不良は出荷検査時には正常動作してしまう為に発見されないことが多いという問題があります。発見するためにはヒートショック等のストレスをかけて、疑似接触が無い事を確認しなければ安心出来ません。対策を怠った為に事後になって自社製品の評判を落としたり、回収が発生したりするとても厄介な不良です。このような場合にも生産現場の静電気対策をしっかりしておけば、不良が発生する要因を取り除いてある訳ですから、安心して出荷する事が出来ます。